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大阪高等裁判所 平成12年(行コ)35号 判決 2000年10月27日

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決を取り消す。

被控訴人が控訴人らの平成四年一二月四日相続開始に係る相続税につき平成七年七月四日付けでした各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と併せて「本件各処分」という。)のうち、控訴人aにつき課税価格二億〇五二九万円、納付すべき税額六七一七万七〇〇〇円を超える部分、及び控訴人bにつき課税価格一億九五八六万六〇〇〇円、納付すべき税額六九一九万三四〇〇円を超える部分をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は第一、二審を通じ被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨

第二当事者の主張

次のとおり付加、訂正するほか原判決の「第二 当事者の主張」のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決六頁二行目末尾の次に改行の上、「本件通達は、会社態様等の区分により各評価方法を組み合わせ、各評価方法による算出額の著しい格差を平準化する手法を採用しているから、仮に本件株式について配当還元方式が採用できないとしても、それは訴外会社の経営態様や目的が多様かつ複雑であることに起因するのであって、その株式の評価についても単一の評価方法によって一面的に決定しうるものでなく、本件株式の評価は①純資産評価額、②類似業種比準価格、③配当還元価額を併用する方法が採用されるべきである。これによれば一株当たりの評価額は五四五四円となる。(甲四九)(当審における仮定的主張)」を加える。

2  同六頁五行目の「このように、本件各処分は、」を「相続税法及びこれに準ずる本件通達については、納税義務者が予測可能でしかも急激な重税にならないような法的安定性をもった解釈運用がなされるべきであるのに、被控訴人は、本件各処分において、本件通達では認められていない高い評価額となる時価純資産価額方式を採用し、もって合理的理由もなく恣意的な解釈により右通達を実質的に改正したものであること、本件では控訴人らは税の専門家であり国家が承認した税理士の税務法令に関する解釈適用につきその専門的判断を信頼してなしたもので、この信頼も保護されるべきであるのに被控訴人の本件各処分により納税者間の実質的な公平を著しく損なう結果を招来したこと等からすれば、本件各処分は、」と改める。

3  同六頁八行目の「また、」の次に「最高税率が七〇パーセントに及ぶ極度の」を加える。

4  同八頁末行の「次男」を「長男」と、同九頁五行目から六行目にかけての「株式会社セムヤーゼ」を「株式会社セムヤーゼ(以下「セムヤーゼ」という。)」とそれぞれ改める。

理由

一  当裁判所も本件請求を棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか原判決理由説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二一頁五行目の「同族株主の意向」を「同族株主以外の株主の意向」と改める。

2  同二二頁三行目冒頭の「三」を「四」と改める。

3  同二四頁一〇行目の「A社B社方式」の次に「(自己の同族会社を二社設立して株式を保有したうえ、法人税控除の適用により当該個人の有する資産評価を低くする節税対策)」を加える。

4  同三三頁末行冒頭の「四」を「五」と改める。

5  三六頁二行目の次に改行の上次のとおり加える。

「控訴人らは、①控訴人らとセムヤーゼとの間の株式売買は、従来からの縁故に基づいてなされたものであって一般的な市場性を反映したものでなく、②また右売買価格は解散価格を基礎としたものであって相続税ないし贈与税の株式評価の視点から比較しても、約四〇パーセント増しの高額な価格であるから、この売買価格をもって時価とみなすことはできないと主張する。しかしながら、①については前記四の2ないし5の事実に照らして縁故に基づく株式売買といえないことは明らかであって採用できず、②についても、株主は株式を保有することにより会社財産を間接的に保有するものであるから、純資産価額をもって株式の評価額とする方法は基本的に客観的合理性を有する評価方法といえるし、他方控訴人ら主張の根拠資料も見当たらず、控訴人らは現に右価額をその保有していた本件株式の大部分につき実現していることに照らして採用できない。

また控訴人らは、仮定的主張として、本件通達が、基本的に各評価方法による算出額の著しい格差を平準化する手法を採用しているから、仮に本件株式について配当還元方式が採用できないとしても、本件株式の評価には①純資産評価額、②類似業種比準価格、③配当還元価額の併用方法が採用されるべきであり、これによれば一株当たりの評価額は五四五四円となる旨主張し、甲四九にはこれに沿う記載がある。しかしながら前記のとおり本件通達は、同族株主以外の株主については、会社の規模にかかわらず配当還元方式によることとし、右方式を適用するのが相当でない場合に評価会社の規模、経営態様や目的等に応じた評価方式を採用するとの立場をとっているものではない(本件通達六も右の場合の評価方式については触れていない。)から、本件通達の解釈として右見解を採ることはできず、基本である相続税法にいう時価の観点から評価するのが相当であり、右主張も採用できない。」

6  原判決三六頁四行目の次に改行の上次のとおり加える。

「六 控訴人らは本件各処分につき憲法三〇条、一三条、三一条、一四条違反を主張する。しかしながら、本件各処分は本件通達の定める方式によらず純資産価額方式を採用したが、右方式が相続税法二二条に定める時価の算定に反するとはいえないし(また本件通達が法規あるいはこれと同視すべきものといえないことは明らかである。)、前記のとおり本件処分は右通達の趣旨目的に沿った合理的解釈運用によってなされたもので、右通達自体も定められた評価方式以外の方式を採用する場合のあることを前提としていること(本件通達六)に照らしても、純資産価額方式の採用が本件通達に反し、これを実質的に改正するものであるともいえないことは明らかである(さらに控訴人らは、税の専門家であり国家が承認した税理士の税務法令に関する解釈適用についての専門的判断を信頼したものであり、この信頼も適正手続の保障として保護されるべきである旨の主張もするが、実質的な租税負担の公平に反する方法を信頼したことによる利益を保護すべき理由はなく、右は独自の見解であって到底採用できない。)。また前記のとおり本件各処分には他の納税者との間での実質的な税負担の公平を図る合理的理由が存在するのであるから、いずれの主張も採用できない。」

7  同三六頁五行目の「五」を「七」と改め、同頁九行目の「累進課税制度についても、」を「累進課税制度は担税力に応じた税負担の配分の要請に適合するもので、公共の福祉に合致した合理的な制度であるといえるから、」と改め、同頁末行の「いうべきである。」の次に「本件では控訴人らの主張する税率の点を考慮してもなおこれが右特段の事情に当たると解することはできない。よって、」を加える。

二  以上によれば、控訴人らの本件請求は理由がない

から棄却すべきである。よってこれと同旨の原判決は相当であるから本件控訴を棄却し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 武田多喜子 裁判官 正木きよみ 裁判官 松本久)

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